改革を実行し社内も「七賢」ブランドも刷新。14代15代目に最高のバトンを渡すことが責任。山梨銘醸 代表取締役社長 北原対馬氏 (山梨)

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山梨銘醸は1750年創業、「七賢」で有名な歴史ある日本酒製造会社です。
13代目の北原対馬社長は、厳しい経営状況から抜け出すため弟の亮庫専務と二人三脚で改革を実行し、順調に業績を伸ばし続けていらっしゃいます。 生まれた時から「未来の社長」として期待を背負う重責や、後継者として必要な矜持とは。歴史が色濃く残る蔵へお邪魔しお話を伺いました。

「未来の社長」生まれながらに背負う期待

マリコロ編集長:北原社長は江戸時代から代々続く山梨銘醸の長男として生まれたわけですが、後継者になることは生まれながらにして決まっていたことだったのですか?それとも自ら選択されたのですか?

北原:両方だと思いますね。日本酒の最大消費年1973年でそれをピークに49年間下降を続けていますが、それでも私が生まれた1980年代はまだまだ日本酒業界は大変儲かって潤っていました。 そのため当時の従業員の経済的な満足度が高く、帰属意識も高かった。次の後継者に対しての期待も強く、「未来の社長」と子どもながらにその期待が伝わってきました。

マリコロ:後継者という意識は子どもの頃から持っていらしたんですね。山梨では誰もが「七賢さん」と呼ぶほど、一目置かれる存在ですよね。

北原:ありがとうございます。やはり歴史が長いですから、学校の先生にも同級生にもおだてられるし、高校生くらいまではお山の大将で、何不自由なく暮らしていましたね。
でも、大学進学のため上京をしたのが2000年頃だったのですが、その頃になると「日本酒離れ」という言葉が聞こえてきて、日本酒がヤバい状況だとわかって、私も不安になりました。
ただ、私も北原家の長男と名乗る以上は「何とか現状を好転させたい」青臭い青年の思いがありました。親父に「入れ」と言われたわけではないし、私も「やらせてくれ」と伝えたわけではないけど、大学卒業後、自然と後継者としての道に進んでいきました。

人生酸っぱい味は今、厳しい経営状況から改革を行い先代と衝突

マリコロ:先代と方針が合わないということはありませんでしたか?

北原:それは今ですかね。家業に就職して最初の3年間はアメリカの輸出先に所属して、営業としてアメリカ全土を回っていました。
その後25歳になって戻ってきた時に、決算書を見たら厳しい経営状況だったんです。おまけに社員の生活が苦しそうでビックリしました。
意気消沈した社員たちが「何とかしてくれ」と希望を託してくるんです。それから25~30歳の5年間は弟と一緒にありとあらゆる改革をしました。

マリコロ:まさに後継者の酸い味です、、それでも弟さんが強い味方になったんですね。

北原:はい。弟は大学で醸造を学んだので、弟が生産技術系を担当し、私が経営や営業を担当するよう親父に言われたんです。弟と一緒にやれることはやったけど最初は結果が出ず、それから2年ほどかけてビジネス戦略を練り、それが今の経営の礎となっています。
今もPDCAを回して、本当に毎日毎日細かいことを繰り返しています。それだけやると結果も付いてきて、今は毎年110%の成長を続けています。 私たちは2年後の売上目標を決めるとか、短期的な視点は持っていません。毎年、新入社員1人・2人を安定的に入れながら、65歳の方が安定的に退職していける。110%が持続可能な成長の数字だと考えています。

後継者は周りを幸せにも不幸にもできる

マリコロ:改革を手掛け、会社が軌道に乗り出したことを先代はどのように受け止めているのでしょうか?

北原:私たちが改革の旗を振り結果を出していることに喜び反面、複雑な思いを持っているかと思います。
でも社員やその家族の生活を守るためにも、改善すべき点があれば経営を正すしかありません。親子の関係がどうなろうとも改革する覚悟がなければ、後継者にはならない方がいいと思います。

マリコロ:家族を守るためにやっていることなのに対立してしまう。辛い立場ですよね。

北原:私の経営のテーマは“継承と革新”です。会社のブランド力を未来永劫高めていく、そのためにはたゆまなく成長させていかなければいけません。
私はこの会社を13番目に紡いだ一人として、14、15人目にバトンを渡した時にさらに走りやすくしてあげればいいわけです。
最大の目的は紡ぐこと。そのために継承と革新の両方をやっていく必要があります。 後継者って、その家に生まれたら誰でもなれるものですが、周りを幸せにもできるし、不幸にもできる存在。辛い立場でも覚悟を持って紡ぐことを考え、改革を推進していく力が求められます。

次代に渡す、優秀な人材、順調な業績、ブランド力

マリコロ:40歳でいらっしゃるのに、すでに次世代に紡ぐことを最大の目的に置かれているんですね。

北原:私は2050年まであと約30年は経営するつもりで、その長期計画が頭にあります。まず2030年頃には新工場、新社屋を建てる。そのために今から準備をしていかなくてはなりません。
そして、創業300年になる2050年には一線を退き次の世代にバトンを紡ぎます。
次の世代に向けて、確立されたブランドと人財を引き継げるよう取り組みを強化しております。

マリコロ:具体的で未来を描きやすいです。後継者は、先代と働いてきた既存の社員に受け入れられることにも苦労すると思うのですが、北原社長の場合はそういったこともなさそうですね。

北原:幸い多くの社員が私に付いて来てくれましたね。最初は上手くいきませんでしたが、弟と経営戦略を練り続け、フルモデルチェンジに踏み切ったら結果が出ました。お酒の味を全部刷新し、パッケージも全部変えて、商品を統廃合しました。
2年くらい冷や飯を食べる覚悟の改革でしたが、早い段階で結果が出始めたんです。商品がどんどん売れたら私も嬉しいですが、社員も嬉しいですよね。
そして、業績が好調だから賞与が増えるなど身を持って会社の成長を体感できます。
従業員には長く働いてもらいたいからこそ、結果が出たらしっかり社員に還元することが重要だと考えています。

一度決めたら自分を信じ切り、実行し続ける覚悟をもつ

マリコロ:老舗に生まれ後継者として改革を経験されていますが、社長として必要な素養とは改めて何だと思われますか?

北原:良き社長は必ず聞く耳を持っています。そして好奇心がすごく旺盛。成功している社長はみんな決まってそうなんです。
年の隔たり、人種など関係なく常に良案を求めています。あとは戦略を練り、それを信じ切ることが必要です。
人と違うことをすると当面は批判されますが、人と違うことをするから成功があります。どれだけ批判されても自分を信じ切り、勇気を持って実行し続けること。社員と家族を守るために一回決めたらやるしかないんです。

マリコロ:会社を率いる魅力と意義を次世代にももっと伝えられたら嬉しいですね。
最後に、後継者や社長を目指す若者にメッセージをお願いします。

北原:「願えば叶う、やればできる」ってことを伝えたいですね。最近、できない理由がないにも関わらず諦めてしまう人が多いと感じています。
まずは願わないと何も始まりません。でも、願っても行動しない人も多いですよね。願いを持ち、とにかく行動しないとダメなんです。 社員にやらせようとしても難しいですから「自分の会社は自分で成長させる」。経営者、後継者にはそういう矜持が必要だと思います。