友人に裏切られ、設立2社目で目的を見失う。それでも先輩経営者のように戦闘力高いスーパーサイヤ人姿を目指したい。
(株)hashigoya
代表取締役社長
長田幸洋氏 (山梨)

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長田幸洋社長は、大学在学中に広告映像の賞を数々と受賞し、19歳で映像制作会社hashigoyaを設立した新進気鋭の経営者です。
一見、順風満帆に見える長田社長の経歴ですが、会社を設立してからはお金の使い込みで友人に裏切られ、二社目の設立では人生の目的を見失うなど挫折を経験し、周囲に対しての考え方や生き方など価値観が大きく変わったそうです。
今回の対談では、そんな長田社長の汗と涙の塩(CEO)味ストーリーと現在の経営スタイルに迫ります。

親しみやすい笑顔で出迎えてくださった長田社長。塩(CEO)味がたくさんあるようには見えないのですが、、

19歳で年収1000万円

マリコロ編集長:長田社長は大学在学中の19歳の時に創業されたそうですね?

長田:はい、大学で映像を学び在学中に色々な賞をとって、19歳の頃から個人に仕事の依頼が来るようになりました。大学生としてはありがたい話なんですが、年収1000万円までいきましたね。
でも一人ではそれが限界で、「自分と同じように映像を作れる人が数人いたら、もっと売上を伸ばせるんじゃないか」と思い、社会人になって法人に変えました。ですから就職しながら“hashigoya”を設立したんです。

事務所兼ご自宅でもある山梨に伺いお話を聞いています。

マリコロ:それだけ仕事の依頼がきていたなら、就職する必要なかったのでは?

長田:仕事を受けるためには、もっと大きな世界を知らないといけないと思ったんです。調べてみたら、映像で一番大きな市場は広告業界だったので、広告代理店に就職しました。
継続案件を社員に回してもらって、自分は広告代理店で世界を広げ、学んだことをhashigoyaに落とす、これで順調に回るだろうと。 でも9ヶ月働いてみて、もっと自分の時間をhashigoyaに使った方が伸びると思い、広告代理店を辞めることにしたんです。

恩師の一言をきっかけに映像制作の道へ

マリコロ:そもそもどのようなきっかけで映像に興味をもたれたのですか?

長田:高校時代に映像をつくって、友達とシェアするためにYouTubeにアップしたんです。
ところが当時はまだYouTubeがあまり一般的に使われていなかったので、保護者からクレームが入り、退学寸前になる大問題になりました。
でも、その時に恩師から「お前がやったことは青春だし、今回は学校の物差しから外れただけだから気にするな。ただその映像がみんなを感動させられるものだったら、校則なんてひっくり返していた。お前は才能があるから、見た人全員を幸せにするような映像をいつか見せてくれ」と言われ、映像の世界に入ることを決意したんです。

いつか母校で卒業生代表として経営ストーリーを話すことが夢のひとつ。

マリコロ:その先生に出会えていなかったら現在の道に進んでいなかったかもしれませんよね。

長田:はい。僕、成績が学年ビリだったんですが、立教大学で映像を学べることを知り、それから毎日勉強して現役で大学に合格することができたんです。 その経験ですごく自信がついて、自分がやりたいと思ったら奇跡は起こせると気づき、それからは映像の道を爆走していますね。

設立した2社目で経営の目的を見失う

マリコロ:これまでのお話を伺うと順調で、塩(CEO)味エピソードがなさそうです(笑)。

長田:いやいや、会社にしてからが本当に大変でしたよ。
起業する時に友人を2人雇い、僕が広告代理店で働いている間そのうちの一人を代表にしていたんです。ところが広告代理店を辞めて戻ったら、彼がお金を個人で使い込み、さらに取引先にもすごく失礼なことをしていることがわかりまして。元々あった取引が20%くらいまで減ってしまいました。

「映像制作で普段取材する側なので、こうやって取材されるの恥ずかしいですね」と照れながら。

仕事を辞めてきたのに、「これじゃ飯食えないじゃん」って焦りましたね。そんなトラブルが何度か続いたので、その友人とは縁を切らざるを得なくて。あまり人を信用することができなくなりましたね。

マリコロ:え!それからどうされたのですか?

長田:正社員を2名採用し、売上は前年の6倍になりましたので成長は順調だったのですが、コロナに直面してしまって。イベント系の映像案件はなくなり、社員とも関係が悪化して全員辞めてしまいました。
一方で、ちょうどそのとき取引先社長から声をかけてもらったことをきっかけに、SNSのコンテンツ制作会社を設立したんです。こちらは1年間で70社、売上一億円に達したのですが、大きなクレームがおこったり組織を作ることの難しさを実感したり。本当にたくさんの負のスパイラルを経験して、私自身経営の目的を見失い躁鬱になりました。

まずは自分を満足させるための環境を整える

マリコロ:その状況からどうやって抜け出したのですか?

長田:「自分が本当に好きなことって何だろう?」と見つめ直し、自分にとっての喜びや大切なものを全部書き出してみたんです。
そうしたら「自然の中で暮らしたい」「自分のことに取り組める時間が欲しい」という欲求に気づきました。そこで欲しいものと環境を整え、会社も売ることに決めたんです。

マリコロ:それで山梨県の北杜市に事務所兼自宅を建てられたんですね。いま訪問させていただいていますが、平屋で天井も床も柱も全部木でできていて、すごく開放感のある空間ですよね。

くねくね道を進み、迷いながら辿り着いた事務所兼ご自宅。水も空気も美味しく心やすらぐ場所です。

長田:自分が満足できる環境を整えたことで「仕事は人のためにするもの」と切り分けることもできました。また“寝るためだけにある家”というのが嫌だったので、生活と住むことがしっかり繋がった設計になっていますし、メンテナンスをすれば長く維持できる家にしたかったので、脱コンクリート、脱プラスチックで土に還る家になりました。発信拠点として理想の環境を手に入れられたと思っています。

企画のできるクリエイターの育成を目指す

マリコロ: 働くという価値観が大きく変わってきた中、経営に対する考え方ややり方も変えていく必要がありますよね、長田社長はどのようにお考えですか?

長田:僕はどちらかというと古風な考えで、40、50代の先輩社長の「社員を育てる」という考えは真似するべきだと思っています。
今は外注とか業務委託という形で進める若い経営者が多いですが、本当に会社を大きくしようと考えたら、社員を育成する仕組みづくりや失敗も含めた採用経験は避けて通れないと僕は考えます。
また、社員だったら会社の文化を共有することができ、業績が伸びたときの要望にも賛同してくれると思うんです。
最近は動画制作のブームが起こっていますが、まだまだ企業の動画活用に正解はなく、きちんと費用対効果を出せる企画がこれからの市場で勝ち残る鍵になると考えています。
ですから、“お客さまに合った動画の企画ができる社内クリエイター”を育てていくことが目標ですね。

マリコロ:確かにニーズは高そうですね。若い世代の挑戦を応援する意味でも伺いたいのですが、長田社長にとって起業したことの最大のメリットは何だったと思いますか?

長田: 出会える人もそうですが、この楽しさは飛び込まないとわからないんですよね。
起業には資格が必要なわけではないし、やろうと思えば明日できるのにやらない意味が分からない。
僕は、経営者ってドラゴンボールでいうスーパーサイヤ人のようなものだと思っていて(笑)。大きなダメージを受けて、そこから回復した時に戦闘力が倍になっている、そういう生き物だと思います。 僕も失敗して這い上がった自分を想像するとワクワクするんです。リスクにワクワクできる人は、チャレンジしてみたら楽しい世界が待っていると思いますよ。

長田社長のスーパーサイヤ人姿、楽しみです!